【主な出演者】
【演目と配役】
一.鬼一法眼三略巻 菊畑(きいちほうげんさんりゃくのまき きくばたけ)
吉岡鬼一法眼 尾上 松 緑
奴智恵内 実は吉岡鬼三太 坂東 亀 蔵
笠原湛海 尾上 左 近
皆鶴姫 坂東 新 悟
奴虎蔵 実は源牛若丸 中村 梅 枝
二.土蜘(つちぐも)
叡山の僧 智籌 実は土蜘の精 尾上 松 緑
源頼光 中村 梅 枝
渡辺源次綱 中村 萬太郎
坂田公時 尾上 左 近
侍女胡蝶 坂東 新 悟
平井保昌 坂東 亀 蔵
【あらすじとみどころ】
■鬼一法眼三略巻 菊畑(きいちほうげんさんりゃくのまき きくばたけ)
平家全盛の時代。舞台になっている兵法学者・吉岡鬼一法眼の館の庭は、今を盛りと見事に菊が咲き誇っています。かつて源氏に仕えていた吉岡三兄弟の長兄である鬼一は、今は平家に仕えています。その鬼一の館に奉公している奴の智恵内は、実は鬼一の弟鬼三太で秘蔵の虎の巻を手に入れるために姿を変えて、敵方の平家に与する兄の真意を探っています。主君である牛若丸もまた、平家討伐の大望を抱きつつ、虎蔵という奴に身をやつし、この館に奉公をしています。鬼一の娘・皆鶴姫は以前から、虎蔵に一途な恋心を寄せていましたが、二人の素性を知ってしまい……。時代物の浄瑠璃の『鬼一法眼三略巻』は、享保十六(一七三一)年九月、大坂の竹本座で初演、後に歌舞伎に移入されました。全五段の内、『菊畑』の通称で知られる本作は三段目にあたります。本名題にある「三略巻」とは、中国の兵法書「六韜」「三略」を指したもので、その中には、所謂、「虎の巻」である「虎韜」が含まれており、この「虎の巻」が物語の展開で重要な役割を果たしています。満開の菊畑を背景に、歌舞伎ならではの様々な役柄が登場する華やかな一幕です。
■土蜘(つちぐも)
時は平安時代。病床に伏せる源頼光の館。家臣の平井保昌が見舞いに訪れ、薬を届けに来た侍女胡蝶が紅葉の名所の様子を物語るので、頼光はしばし癒されています。しかし夜が更け、再び胸苦しさを感じる頼光のもとへ智籌と名乗る叡山の僧が忽然と姿を現します。智籌は病気平癒の祈祷を申し出ますが……。明治十四年(一八八一)六月、河竹黙阿弥の作詞、三世杵屋正治郎の作曲、初世花柳壽輔の振付により、三世尾上菊五郎の三十三回忌追善狂言として五世菊五郎によって新富座で初演され、後に菊五郎家の家の芸「新古演劇十種」の一つに選定されました。謡曲の「土蜘蛛」を素材とした舞踊劇で、能舞台を模した〝松羽目物〟の大曲の一つとして繰り返し上演されています。僧智籌が醸し出す妖しさと頼光が見せる品格の対峙、本性を現した智籌が千筋の糸を繰り出す華麗な立廻りに目を奪われます。重厚でありながら変化に富んだ舞台をご堪能ください。
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